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2014.09.30 ある秋の日の、ハルの出来事

忘れもしない、2011年3月11日。
ここ松島も大きな地震と津波に襲われました。
 
水族館の広場の変わり果てた姿にただ呆然としました。
1階部分は浸水し、電気のつかない館内は真っ暗。水槽の水は濁り、加温していたプールの水は冷たくなっていきました。
 
その夜から途方もない、復旧作業が始まりました。
あの日感じた明日が見えないことへの不安はきっと、後にも先にもないほどに大きく感じました。
 
大地震から数日が経ったある日。
ペンギンプールで小さな命が誕生しました。
十数年ぶりのケープペンギンの赤ちゃんです。
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名前は「ハル」。
どんなにつらい冬も明けないことはない。きっと暖かい「春」が訪れる。そんな願いを込めて名付けられたメスのケープペンギン。地震や津波にも負けず、ハルはすくすくと成長しました。
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それから長い時間が経ちました。もう一人前の大人のペンギンになったハルでしたが、ここ数日、ゴハンを食べません。何かに脅えているのか、魚の入ったバットに寄ってきたと思ったら、すぐに離れてしまいます。
 
心配になった飼育員に相談され、血液検査を行いました。
異常は見つかりません。
でもご飯を食べないばかりか、あんなに仲良しだったお母さんペンギンともケンカをしている様子です。一体どうしたんだろう、ハル・・・。
 
それから数日。
とある別の種類のペンギンの巣でひとつの卵が見つかりました。
飼育員の目から、どう見ても「ケープペンギンの卵」だそうです。
きっとハルが産んだに違いない。飼育員とそう話していました。
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あの日から3年と半年。
過ぎてみると短かったように感じますが、ハルは確実に大人のペンギンへと成長していたのです。ハルの産んだ卵を見るまで、どうしようもない不安や、それをみんなで乗り越えてきた日々を忘れてしまっていたように思います。
 
今では元気を取り戻しごはんもしっかり食べるようになったハル。
もう心配はないでしょう。
 
このちょっとした出来事は、マリンピアとして残りの時間をどう過ごしていくか、今一度考えるキッカケを僕に与えてくれました。
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担当:田中(たなちゅう)

 

 

 

追)
ハルの卵は孵らないことがわかった後、残念ですが、取り上げを行いました。